オリジナル

外伝2 異世界で王妃になったメインヒロイン(仮)、バッドエンドルートを回避できませんでした。

  私はどこで、何を間違えてしまったのだろうか。 「不憫には思うが、諦めてくれ」 そう言って目の前に立つ男の声は、本当に憐憫を含んでいた。大広間の冷たい床に膝をついて俯いていた王妃はそれを聞いて、しっかりと顔を上げて相手…

第7話 ドンキでお買い物

 コンビニのない異世界には当然ドンキもなかったが、ドンキの上から下までごちゃごちゃとした「何でもある」雑然とした雰囲気は、大きな街の少し外れにあった道具屋を思い出させた。 あそこも何だか色々置いてあったり吊るしてあったりしたなぁと思い出しな…

第6話 学校帰りのコンビニ

「晃、ちょっとコンビニ寄って良いか?」「いいよー」 なんてことのない学校帰りの寄り道だが、特に用事もなく目についたコンビニに入ってしまう癖が晃と直尚、どちらにもつきつつある。「なんか、だから何というわけでもなく便利さを享受したくなる……」「…

第5話 昼休みの屋上

「思い出した!」 隣で直尚が急に声を上げたので、びっくりしてパックのコーヒーミルクを握り潰しそうになる。「おい」「あ、悪い。大丈夫か?」 屋上の床に少しこぼれただけで、昼飯のパンや晃の制服が無事であることを確認した直尚は話を続けた。「この前…

外伝1 異世界の皇太子に婚約破棄された元悪役令嬢は百合ルートに突入しました。

1.「婚約を破棄して欲しい」 そう告げた皇太子の隣には異世界から来たという可憐な少女が並んでいた。そうして私は察してしまう。 ――この世界、わたくしが悪役令嬢なのだわ。 悪役令嬢と呼ばれるものが具体的にどのような存在なのか、実はよく知らない…

第4話 ジャンプとマガジンとswitch

 溜まっていたジャンプは退院後、通学再開前の自宅待機中に全部捨ててしまった。家にある一番古いものを読み返しても内容を思い出すことができなかったからだ。「俺もマガジン捨てたよ。四十年以上間が空いたからなぁ」「向こうに行ったばかりの頃はあんなに…

第3話 クローゼットと休日デート

 自室のクローゼットを開けて、しばらく眺めて、首を傾げる。「俺、何着てたっけ?」  麻の筒袖は頭からかぶって着たあと襟元の開き具合を紐で調節し、その下に履いた筒袴の裾は皮を重ねて作ったブーツに入れてしまう。腰に巻いた帯に鞘付きの短…

第2話 久しぶりのマック

 トラックに跳ねられてアニメやラノベのように異世界に飛ばされて。そこで一生を終えて戻ってきた元の世界でもまた、俺たちは一緒にいる。 「クラスの連中と話が合わない……」 学校帰りのマックでぼんやりと晃が呟けば、直尚も深く同意するよう…

第1話 再会

 白い天井、うねうねとした波線が映し出されている機械、点滴と、それらから伸びているいくつものカラフルな管や電線。なんだか息苦しく感じるのはプラスチックのマスクを付けられているからだと気がついた。酸素を送り込む装置だったか何だったか。テレビド…