海賊と小鳥
ぴっ、ぴよ、ぴぃ、と高く軽やかな鳴き声が聞こえたのはウィリーの頭上からだった。それに気が付いたドラコがしみじみとした様子で眺めながら頷いて見せる。「鳥の巣のような頭、って表現はあるけどそれ、本当に鳥の巣だったのか」「違ぇよ! なんかさっき…
舞台二次創作パンドラ
海賊と闇オークション
招待状を持っている者しか入れない店内で秘密裏に行われていたのは、出所や由来が不確かな怪しいものばかりが集められて出品される、いわゆる闇オークションだった。「どうやって手に入れたんだこれ」「タマルに作らせた」「なるほど偽造招待状」 持つべき…
舞台二次創作パンドラ
海賊と人魚姫
派手な爆発音は、遠くまでよく響いた。 吹き飛ばした船の一部であっただろう木材に捕まる形で、ぷかぷかと波打ち際に浮いている男の服を雑に掴んで力任せに引っ張る。寄せては返す波を蹴り上げながら陸地に向かい、浅瀬に乗り上げてからはその…
舞台二次創作パンドラ
海賊と朝
この船の航海士は腕がいい。 航海士の仕事はつまるところ、現在地の把握から始まる。自分たちの船は今、この大海原のどこに位置しているのか。近くに目立つ岬や灯台などがあればいいが、いつもそう都合が良いとは限らない。望遠鏡を覗いた遠い向こう側に何…
舞台二次創作パンドラ
海賊と仮眠
深い海の底から浮かび上がるように。意識が戻ってくるその瞬間に。 嫌な夢を見ていた気がする。懸命に泳いでいるのにいつまでも岸に辿り着けないような、焦りと不安がない交ぜになった、そんな夢だ。 内容なんて覚えてないし、筋の通ったストーリーなど最…
舞台二次創作パンドラ
海賊と猫
副船長は動物にモテる。どこの港町にも必ず多くいる猫たちからも、何故だか知らないがモテモテである。そしてその日、挨拶に来ていたのは一匹の黒猫だった。 ウィリーとドラコの二人で個人的な買い物を終えて、ちょっと買い忘れたものがあるから先に戻って…
舞台二次創作パンドラ
海賊と酒場
重い扉を押し開ければ、カランカランと小さなベルが店内に鳴り響く。 薄暗いカウンターのいつもの席に座ってそのまま黙っている眼帯姿の青年に、マスターはいつものグラスへいつもの酒を満たして差し出した。そして、隣の席にも同様に。 昔と何も変わらな…
舞台二次創作パンドラ
海賊と赤ん坊
ちょうど寝たところですよと言いながら笑った乳母が部屋を出て行く、そのタイミングを見計らったかのように、赤ん坊が泣き出した。 今この部屋には自分一人しかいない。だから仕方がない。火がついたように泣きじゃくる赤子を、そーっとゆっくりと揺り籠…
舞台二次創作パンドラ
パンドラの箱(NW)
箱を開けても世界は終わらなかったし始まりもしなかった。 ただそこに、古ぼけた箱が残っている。「なんだ、何も変わらないじゃないか」 世界が変わることを求めたのに何も変わらない。世界の終わりを望んだのに少しも終わりそうにない。終わらないから、…
舞台二次創作パンドラ