もののふ

ワルツ

 窓の外は石畳の街だった。 最初は何もかも初めて見るものばかりで目を回しそうになったが、さすがに近頃は少し目が慣れてきた。それでも久しぶりに会う幼馴染が背広の上着を脱いで、白いワイシャツと、スラックスと同柄のチョッキ姿で二人分の紅茶を運んで…

スナイパー

「どうして撃たなかったんだ?」 その問いかけとともに新八から手渡されたのは、冷たい井戸水に浸してよく絞った手拭いだった。ひんやりとしたそれを受け取った大山は半次郎に殴られた頬に当てながら、何が?と視線で問い返す。「撃ったからこうして殴られた…

憧れの背中

 少年が近藤の名を出した時、その内容よりも時期の悪さに、思わず少年を背に庇ってしまった。咄嗟のこととはいえ自分らしくもないと思いつつも、だからこそ、その後の土方の反応が齋藤には意外に思えた。 実は少年たちのために取り寄せていた会津の酒を残し…