「あの二人が並んでるとさぁ、大型犬と小型犬みたいだよね」
素振りか稽古の途中だったのだろうか。互いに木刀を手にしたまま何やら歓談している様子の大山と晋介を見つけた新八の言葉に、隣を歩いていた半次郎は一旦、間を置いてから答えた。
「……まあ、言いたいことはわかる」
「可愛いよねー」
完全に子犬や子猫を相手にした時の言い方だったが、思わず半次郎は気になって尋ねてしまう。
「どっちが?」
「どっちも? 強いて言うなら大きい方かな」
「相変わらず趣味が悪いな」
「うん、それってさぁ、晋介のことは可愛いと思って当然だって半さんが思ってるってことだよね」
「………………」
「人のこと言えないよね?」
「………………」
お前と一緒にするなとか、そういうことではないとか、色々反論したいことはあるのだが新八に言われるまで気づかなかった時点で半次郎の負けだった。
こうなってしまえば何を言っても揚げ足を取られるだけであると、わかっているので死んだ魚のような目をしたまま無言を貫く半次郎の後ろから、ぬっと顔を出した男が笑顔で宣言した。
「俺は西郷が一番可愛いと思うぞ!」
「大久保さんには聞いてないですー」
2019.01.27発行『もののふの本/りんかねの本』のおまけ。