左近ちゃんと刑部さん

この男は恐ろしい。人の部屋にごろりと寝転び、菓子を食べ本を読んでいるだけのこの男が。「ん?刑部さんも食べます?」「左様に甘い菓子などいらぬわ」「えー、美味しいっすよ?」物怖じしないどころの話ではない。ここは不気味がって誰も近づかない、薄暗い部屋であった筈だ。ひと月ほど前までは。